2014年11月20日木曜日

回らない凧を考える

凧が回ってしまうというのはどういうことだろうか?
凧の不安定モードの一つに「回る」というものがある。
回ってしまう凧

回る凧

通常、飛行機設計における姿勢安定においては、ピッチ・ヨー・ロールまわりの安定性を考えればよいが、凧の場合は張力が働いているため、テザーの根本を支点とした回転や振動に対しても安定性を考えなければならない。

不安定に陥ると、まず凧は図の灰色の矢印方向に振動し、さらに振幅が増大すると、天球上を回転する。回転しながら仰角が下がっていき、最悪の場合は高速で墜落することもある。


回る凧を回らなくするには

「回る凧」の起点は、ヨーまわりの振動にある。凧の上反角や尾、キールなどは、ヨーまわりの安定性確保に役に立っている。

作ったばかりの凧がすぐにクルクル回ってしまうような場合、たとえば上反角を大きめにとってしまえば、簡単に安定させることができる。

しかし、おおよそ安定している凧でさえも、強風をうけて不安定になってしまう場合がある。

強い風で回ってしまう凧

おおよそ順調に揚がっていた凧が、高度を獲得したり、風が強くなったタイミングで突如回る凧になってしまう場合がある。そのような場合は、糸をゆるめれば回復するが、どんどん高くあがってしまうと、さらに風が強くなり、途方に暮れてしまうかもしれない。

強風で回りやすくなってしまう理由はなぜだろうか?第一の理由は、糸目と重心のズレ、第二の理由は、形状変形の非対称性である。形状変形の非対称を生む理由は、工作精度の不足や、骨格材料の非対称性(竹の節など)、糸目の左右非対称などである。

普通、凧はピッチ方向の安定性を前後翼のモーメントバランス、ロール方向の安定性を上反角で得ている。理想的な凧では、空気力が増大したとしてもこれらが変化しないように調整されている。

ヨー方向の不安定が生じてしまう理由は、凧が左右非対称に変形し、結果的に「垂直尾翼」が傾いてしまうことにある。実際の凧には、垂直尾翼はついておらず、上反角やキールなどによって風見安定性(ヨー安定性)を得ている。

そのため、まわらせないための第一の方法は、上反角を大きくとり、キールなどの面積を増やし、垂直尾翼として機能する要素を増やすことだ。だが、揚力を減じ、抗力を増加させてしまう。
→ゲイラカイトのキールなど

第二の方法は、凧の剛性を大きくし、強風でも変形しないようにすることだ。しかし、凧の構造を剛にするためには、重量が増加する。
→強風用凧として知られるボックスカイト

第三の方法は、工作精度を高くし、変形の非対称性を小さくすることだ。寸法精度だけでなく、やわらかさも左右均質にし、糸目も理想的な位置に設定する必要がある。
→一見簡単な構造でも、名人の作る凧は安定してよくあがる。

第四の簡単な方法は、糸目を重心より大きく前側にとることだ。空気力の増大が、機首下げをもたらすため、空気力が大きくならなくなる。
ただし、上昇とともに糸にかかる抗力は増大していくので、高度方向の制限が大きくなる。







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